市民と行政をつなぐ報告アプリ「My City Report」開発者に聞く行政DXの課題とプロジェクトを成功に導くコツ

2022年2月7日月曜日 · 8分で読める

市民協働アプリ「My City Report」を通じて開発者が感じた行政DXのあれこれを聞いてみました。

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道路の損傷を始めとする街の困りごとや街の気づきを市民が手軽にアプリを通じて担当自治体に直接報告することができるアプリ「My City Report 」は東京大学主導の市民協働プロジェクトとして現在東京都をはじめとし複数の都道府県で導入されています。

アプリのユーザーに対して導入自治体が実施したアンケートによると、回答者のうちほぼ100%が「アプリを利用してから街への意識が変わった」と回答し、MCRの取り組みを「良い取り組みだと感じる」人も100%を記録しました。(参照:ちばレポ登録者向けアンケート集計結果報告

MCR App
© My City Report

ユーザー側だけではなく、従来の電話対応からアプリを通じた報告へ受付方法を変えることで、対応コストの削減につながるなど、ツールを使う自治体側もデジタル•トランスフォメーションによる恩恵を受けることができているのがこのプロジェクトの特徴です。このように、ツールを使う市民、自治体、プロジェクトチームという関わる人々が三者三様のメリットを享受できる「win-win-winなDX」なプロジェクトにするためにはどんなことが重要なのでしょうか?行政のワークフローをDX化する上での難しさやリアルな声を、My City Reportの開発者へインタビューし、開発者の視点で見るDXについてまとめました。

市民のためのアプリ「My City Report」が叶えたいこと

インタビューをお引き受けくださりありがとうございます。MCRがアプリとしてローンチされ自治体に導入されてから数年が経ちますが、現在MCR開発元のGeorepublic Japanでは、よりユーザーの目線に立ったアプリとしてMCRを改革していこうとする「ALL Japan構想」というプロジェクトが動き始めているとお聞きしました。こちらはどういった背景から生まれたものなのでしょうか?

MCRに限った話ではないのですが、行政のプロジェクトでは自治体、大学、ロビー団体、実際にサービスを受ける市民など多くのステークホルダーが複雑に絡み合うプロジェクトであることが多いです。そうした中で、特にプロジェクトが発足した後にそれぞれの関係者から機能追加の要望や変更の要望などいろいろな観点からの意見をもらうことが増えます。

まずこうした要望や様々な声の中、どれを拾っていくのかを決めるにはプロダクトとして実現したいことをはっきりと明確にする必要があります。

例えばMCRで言えば、「市民にとって街の困りごとを報告しやすくする」というアプリとして実現したい明確なビジョンがありますが、これを実現できる機能やデザインなどを「市民のために」提供していくことを第一命題として置くことが重要です。

プロジェクトが進むにつれ仕事も増えますが、直近のことばかりに目を取られると先が見えなくなり、こうした軸の部分がブレる危険性があります。

良いアプリとは?

なるほど。数多くのステークホルダーが絡むプロジェクトでは「誰のために」「何のために」を明確にすることで意思決定のプロセスや軸も明確になり、スムーズな運営が実現できるようになるのですね。ちなみに、そうしたことを踏まえ、「良いアプリ」とは何だと思いますか?(いきなり大きな話になってしまうのですが)

MCRの現在の課題は、加入している自治体の範囲でしかレポートが投稿できない点です。そのため、報告したいことがあるユーザーが投稿を上げても、対応できないことも多くあり、ユーザーにとって使いにくい点となっています。

MCRでは現在ユーザー数を増やそうとしています。「ユーザー数が多い=支持されている」というのもアプリの良し悪しを見る1つの指標だとは思いますが、使いにくい点が改善されないまま、「アプリを使いにくい」と感じるユーザーの数が増えることが果たして良いことなのかは疑問が残ります。開発側としては「アプリが実現したいことを実現できるアプリ」が良いアプリなのではないかと感じます。

開発はどこまで機能要望に歩み寄るべきなのか

ありがとうございます。LOBSTAでもその点を忘れないで開発を進めていきたいと感じました。現在LOBSTAでは4月のオフィシャルリリースに向けてベータ版の提供及び様々な業種との意見交換を行なっています。

他業種や他企業の成功例や類似例を知って、具体的にDXすることのメリットを感じて自社のワークフローをデジタル化したいと考えている企業や、組織の現状に危機感を感じ、その打開策としてDXでの解決方法を模索している企業などいろいろなパターンがありますが、こうした意見交換を通じてアプリ開発側として感じるのは、ツールを使う側、そして提供する側はお互いどこまで歩み寄りが必要なのかという塩梅が難しいということです。

例えば開発側は「このツールを最大限に活かすためにはエクセルやPDFで出力しない方が良い」と感じていても、ツールを使う企業側は「既存のワークフローでこの点はどうしても外せない」といったことも多々あります。こういった場合どのようにバランスを取るべきか悩みます。

MCRのプロジェクトでも似たような状況に遭遇することがあります。例えば、MCRでは基幹技術に「Redmine」というオープンソースライブラリを用いいているのですが、Redmineはタスクを効率的に管理するための独自の理論に基づいて開発されているため、その考え方に沿ってワークフローを変えていくことがこのツールを最大限に活かす近道となります。つまり、このツールを使う以上、このツールについて機能面だけではなく考え方に対して理解を深め、実際に業務を改善してもらうことが重要になります。

機能要望をいただく際に、「どうしてこの機能が必要なのか?」という背景にある理由をしっかりヒアリングしてみると良いと思います。 エクセルやPDFに出力しなければいけない理由が法律で求められている条件である等の絶対必要条件であるなら話は別として、意外と「慣習だから」とか「前例がないから」などの理由で求められていることも多いです。

DXは開発する側もツールを導入する側も二人三脚でなければ実現しません。 導入する側も仕事のやり方をツールに合わせた仕事の仕方に変える姿勢を持ってもらうことが必要不可欠です。「この機能がないとダメ」という姿勢ではダメで、「このツールを使って今までの仕事をどう改善できるか?」という考え方にシフトすることがDX成功の秘訣の1つだと思います。

そういった意味では、DXの実施にあたってまずは変化を受け入れるためにマインドを変える必要があると思います。

自治体プロジェクトならではの難しさとは?

デジタルトランスフォメーションの前に、マインドトランスフォメーションですね。すごく分かりやすかったです。ちなみに、自治体等行政プロジェクトで新しいやり方を提案する難しさはどんなところにあるのでしょうか?

先ほども少し触れましたが、前例がないとなかなか新しいことを取り入れづらい「前例主義」的な部分と、人事異動があるので新しいやり方が定着しにくいことでしょうか。また、契約形態も難しさの1つです。行政プロジェクトは契約形態が年間契約のことが多く、システム要件をしっかり決めてシステムを発注し、それに沿って受託開発、納品をする業者という構図が決まっているので、例えば「自治体の業務プロセスを改善する」というコンサル的な発注の仕方では予算が下りづらい、などの事情があるかもしれません。そこが変わるといいなぁと思います。

それはお役所のシステム自体を変えないと、やっぱりダメなんでしょうか?

そこまで大それたことをしなくてもいいと思っています。例えば兵庫県加古川市はコロナ給付金のオンライン申請のシステムをいち早く整備したり、意欲的に取り組んでいるところもあります。重要なのは、小さくてもいいからデジタル化に挑戦し、小さい成功体験を重ねていくことだと感じています。

小さい成功体験を重ね、自信と確信を徐々に積み上げていくことでマインドを変化させていく。デジタルトランスフォメーションと聞くと、なんだか未来的な響きがしますが実はすごく身近なところから始まるものなのかもしれませんね。今回はインタビューにお答えいただきありがとうございました!

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